今回もヒルクライムについて、それも参加車について続けましょう。

公認レース(ヒルクライムが非公認という意味ではありません)では
ホモロゲーションが時効で切れると
そのクルマはレースに参加できなくなります。
また
参加するレース自体がなくなってしまった
あるいは
旧型ゆえの戦闘力不足で、サーキットでは勝負にならない
といったクルマたちは少なからず存在するでしょう。

旧くはあってもそのクルマが機械的に完調、
ハードウェアとして現役であれば
増してや所有者であれば、
走らせたいと思うのは当然のことでしょう。

そういった「退役レーシングカーの受け皿」としてもヒルクライムはあります。

公道ゆえ横Gの限界を極める走りは不可能
サーキットでは効果的なフロアのダウンフォースデバイスも
荒れた峠道ではその効力を失いがちです。
となれば純粋に操縦性の勝負、
熟成された(=手足の如く動く)旧型車に光が当たる瞬間があります。
加えて
峻険な峠の登りゆえトラクションがものをいいます。
そこにリアエンジン車の、
限界域のトリッキーさを越えたメリットがあり
シムカやNSU、旧いアバルトたちが大挙して現れる理由があります。

乗り慣れた自己所有のレース専用車で現代のクルマを打ち負かす。
明らかに戦闘力が劣るクルマが特定の条件下で輝く時がある。
現代のモータースポーツが忘れてしまった
ロマンがあると思いませんか?

上記が当てはまる最新刊が
ドイツのレーシングカー山岳選手権

Sportwagen Berg-cup 2009 DVD


ルマンを走るような2座席レーシングスポーツが峠を走ります。

チャンピオン駆る青いオゼッラは
スポーツカーノーズの先端にウィングを付加、テールも高い、
ウェッジシェイプの'70年代スタイルです。
ほかにも同車エントラントは多数を占め
敢えて(?)長大な直6エンジンを搭載した
白銀のアルミモノコック車からは
性能一辺倒ではないエンスー心を感じます。

一方、本来ポテンシャルでは上回っているはずの
低いテール、ディフューザー装備の現代のカーボンモノコック・ルマンカーは
バンピーな路面に苦戦、ピッチングに悩みます。

スポーツカーが「スポーツカー」だった頃の
豊かなサスストロークがメリットを発揮しているのでしょう。
ハンドリングとは?と考えさせられる1本です。

次回はグループBラリーカー(サバイバー!)や
他のヒルクライムスペシャルについて
と考えておりますが
何かご質問があればメールもしくは
東京店まで直接どうぞ。
ご来店お待ちしております。

東京店 T.K.