B-29 Frozen in Time ガキンチョの頃の探検ごっこや基地ごっこは、本当に楽しかった。たまたま住んでたところのそばに、元肺病棟だった半分廃墟の広い広〜い敷地があって、そこにはホントにいろんなものがあって蝶やトンボもいっぱいいて、塀を乗り越えてその中に入るときは、期待でこう、なぜか下腹部のあたりが熱くなったような気がするなァ。
 グリーンランドのツンドラに不時着したままのB29に対して、この男たちも似たような感覚を抱いたんじゃないか。これを直して飛べるようにする。それだけでも男の子としてメチャ興奮する。しかも成功すればたぶんカネになる。まさに男のロマン! マンモス狩りに出かける石器時代の男たちと同じロマンだよ!!

 実録モノだから、すんごいリアリティなんだよね当たり前だけど。現場まで資材を運ぶ輸送機の離着陸ひとつとってもハラハラ。夏のツンドラは表土が溶けてけっこう柔らかいみたいで、ヘタすりゃタイヤが埋まっちゃう。毎回毎回命がけだよ。
 で、レストアでしょ。なにしろB29をレストアするんだから! トヨタ2000GTとは規模が違う。しかも場所は北極圏のグリーンランド! もう男のロマンが濃すぎて失神しそうだよ!! エンジンはすでにレストア済みのものを4基、輸送機で運んで取り付けて。しかし超々ジェラルミン(なのか?)ってすごいね。50年経ってもボディは平気なんだね。じゃ南洋の島のゼロ戦がボロボロになってるのはナゼ? そんなこと考えるヒマもなく話は進む。
 数々の困難により断念寸前に追い込まれつつ、最後のバクチ状態でエンジン始動、飛行にトライ(英語ヒヤリング能力の不足により一部推定)!
 その時、とんでもないことが起きてしまう。見てる側としてもまさに茫然自失、「えーーーーーっ!」って叫んじまった。
 すべてがドキュメンタリーなのに、映画でもここまでドラマチックにはできないだろ、という劇的な幕切れ。ああ、男たちはマンモスに踏み潰されてしまった。でもそれは仕方ないんだ。リスクのない冒険などない。そのリスクに飲み込まれた時こそ、真の人間ドラマがあるんだね。
 男とは何か? という問いが胸にこだまする名作でした。涙が出ます。

「B-29 Frozen in Time」
DVD/独語/50分/NTSC
税込価格 4,830円 (本体価格 4,600円)