ルーベへの道 自転車界の二大クラシックレースのひとつ、パリ・ルーベは、1896年の第1回以来2008年で106回の開催を迎える歴史的な自転車レース。“クラシックの女王”と称されることもあれば“北の地獄”と呼ばれることもある、長い歴史を誇る過酷な競技である。
 パリ郊外のコンペーニュから北に向かい、ベルギーとの国境に沿ってフランス北部の工業都市リール郊外のルーベまで、約260kmを1日で走り切るワンデーレースだ。
 タイトルの“ROAD to ROUBAIX”は、そのまま“ルーベへの道”であり、この単純なフレーズがかえって、自転車レースに興味のある人の好奇心をかきたてるのではないだろうか。

 うねうねと起伏を繰り返す北フランスならではの景色の中を行く闘いのコースには、険しい山道がない代わり、コースの大半が石畳敷きなのが大きな特徴といえる。
 今なおフランスには石畳の道が多いとはいえ、パリ・ルーベに使われるルートには1世紀以上前から保存されている歴史的街路も多数含まれており、握りこぶし大から人の頭大まで、ギザギザからつるつるまで、大きさも形もさまざまな石畳が選手たちを(だけでなく、メカニックや、オートバイで追っかけて取材する人々をも)を苦しめる。
 手入れされた都会の石畳とは異なり、晴れれば砂が浮き、雨に濡れれば泥まみれになる石畳の小径は、パリ・ルーベの歴史の中で、常にドラマの舞台であり、脇役であり、起爆剤でもあった。
 あのボブ・ロールをして「パリ・ルーベみたいなレースは、断じて他にはない。地球上に、こんな競技が他にあるとは思えない」と言わしめたほどだ。フランスの現代作家、ギ・ラゴルスは「パーティーのように始まり、悪い夢のように終わる」と形容している。
 長くパリ・ルーベに参加してきたメカニックの「ここを走った自転車は、二度とプロの使い物にはならない」という言葉にも“北の地獄”ならではの死闘のほどがうかがえる。
 このDVDは、歴史的な写真や映像を交えつつ、近年の優勝選手やメカニック、関係者などのインタビューを通じて、パリ-ルーベならではの過酷さ、難しさを伝え、激しいレースの魅力に迫るドキュメンタリー作品である。
 パリ・ルーベには他に、ハードカバー・大判(220ページ超)の洋書もあり、こちらは4人のフランス人による共著を英語に翻訳したもの。これらのDVDや書籍を通じて、クルマやバイクの24時間耐久レースの人気が高く、パリ・ダカールラリーを生んだ国ならではの“過酷な競争”に対する期待感、社会的地位などについても考えさせられる。

「ROAD to ROUBAIX」(ルーベへの道)
DVD/英語/75分/NTSC・PALハイブリッド/¥4,830(税込)